本楽譜収録CD『フランスバロックからタイユフェールまで 休暇の日々』の解説より
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「フランソワ・クープラン(François Couperin 1668-1733)
フランソワ・クープランは、ジャン=フィリップ・ラモーと共にバロック時代のフランスを代表する作曲家の一人であり、多くの音楽家を輩出したクープラン一族の中で最も著名。フランソワ・クープランの作品の中で主要な位置を占めるのは4巻からなるクラヴサン曲集であり、約220曲の小品が27のオルドル (ordre) と称する組曲を構成している。彼のクラヴサン曲は、組曲では一般的な舞曲より、タイトルを持つ描写的な作品が多くを占めている。
♪神秘のバリケード
本作品はフランソワの代表作であり、今日でも頻繁に演奏されていますが、“Les Barricades mistérieuses”というタイトルの由来ははっきりしていません。日本語でも「神秘のバリケード」の他、「神秘の障壁」「神秘の防壁」など様々な訳があり、表題が何を意味するのかまさに神秘のヴェールに包まれています。シンプルな和声の組み立てながら、効果的な係留音の使用によって、常に「焦らされた」状態にあり、それはまるで巧みな恋の駆け引きのようであり、それでいて気品溢れる女性の気高さを感じます。原曲は、クラヴサン(チェンバロ)で演奏される変ロ長調ですが、ピアノでこの調性で演奏すると低音の重たさが目立ってしまい、優雅さを表現することが困難だったため、変ホ長調で演奏しました。思い切った決断でしたが、その結果この曲の魅力をピアノで最大限に引き出すことができたと思っています。」
※楽譜に施している装飾音はオリジナルの記号とは異なっているので、オリジナルの装飾音については原典を当たってください。