
2018年、箏奏者である山水美樹さんのリサイタルにて作曲委嘱いただいた、独奏箏に歌唱を伴う作品。声を伴う明るい音楽がよいとお聞きし、二人で詩をいくつか探した。彼女が選んだのは、谷川俊太郎さんの詩集『手紙』の『奏楽』だった。谷川さんに詩の使用許可をいただいたあと、いざ作曲を始めると、この詩に内包された詩と音楽の広がりに圧倒された。私の作曲した「奏楽」では、ひとりの人間がひとつの楽器に息を吹き込み、西洋・東洋・現代など種々の音楽を奏でます。曲の前半では、オーケストラの各セクションを模倣していきます。「黄金の楽器」では金管楽器群によるファンファーレ(式典向きの華やかな楽曲)、「銀の楽器」ではフルートによる冷ややかな神秘のヴィルトゥオーゾ(技巧的なパッセージ)、「木の楽器」ではオーボエが織りなすダモーレ(愛情あふれる歌)、「肉の楽器」では不協和を伴うアパッショナート(熱情的な楽想)が奏されます。これら4つの楽章を経て、音楽は息を待ち、最後には風を仰ぐパイプオルガンのように、会場という空間に深く響き渡ります。(佐原詩音)