1840年9月12日クララ・ヴィークとの結婚式の前日に、「最愛の花嫁へ」と書いて捧げた歌曲集《ミルテの花》を作曲したのはロベルト・シューマン。ゲーテやハイネなどの詩に基づいた、愛に溢れる16曲収録の歌曲集第3曲に収められているのが、今回取り上げた「くるみの木」です。くるみの花たちの囁きと乙女の心情が対句になっているモーゼンの詩を、シンプルなメロディで歌と伴奏の応答として活かしているところなど、素晴らしい名曲のひとつです。クララ・シューマン編曲のピアノ独奏曲の楽譜も存在しますが、敢えて原曲から離れた斬新な解釈と色付けでまとめてみました。歌と伴奏の部分の音域をキッパリ変えて、メロディが伴奏のアルペジオの中に潜り込まないスタイルになっています。また、歌詞の内容 (心の動きや感情の昂まり) に添って、さまざまな伴奏形でその空気感を一層リアルに表現したり、その日の気分をハーモニーに盛り込んだりと、ポピュラー・ピアノならではのアドリブ的な楽しみ方も、模範演奏の中から見つけ出して、試してみてくださいね。わずかにビート感を持たせて演奏すると、さらにポピュラーっぽい雰囲気が増してきます。