鉄の轍 (福屋 篤) / マンドリン 中級

編成：マンドリンオーケストラ(マンドリン×2、マンドラ、マンドロンチェロ、ギター、コントラバス、パーカッション4名)
難易度：中級程度
演奏時間：16分程度

フェッロ・マンドリーノ北九州委嘱作品。フェッロ＝鐵から着想を得て、西方から製鉄技術が伝播していったアイアンロード。その東の果ての東アジアを題材として作曲いたしました。本来フェッロ・マンドリーノ北九州が「東アジア文化都市」に参加予定だったためにこのテーマで臨みましたが、コロナ禍のため演奏会は2年も流れ苦難を乗り越えた初演となりました。

　大陸から鉄器がもたらされたとされる縄文後期、九州北部のある邑に住む青年が大陸からの文化と製鉄技術に触れ、その憧れから旅立つ…その軌跡を夢想し、8つの場面に分けて描いた音楽物語風の作品です。練習番号に合わせて以下の8つの場面からなります。
　冒頭 – 邂逅…海を越えやってきた大陸文化と青年の出会い
　2番 – 旅立ち…製鉄技術を持ち帰るために旅に出る。親友は持衰を志願し共にゆく
　8番 - 嵐と持衰…海は大時化に。持衰は意を決し人柱となる
　17番 - 大陸にて…青年は失意に暮れるが、夢に見た大陸の文化は彼を大いに癒した
　20番 - 鉄…許された期間、ただひたすら製鉄の技術を学ぶ
　24番 - 帰郷…一通りの知識と技術を得て、一行は故郷へ向かう
　25番 – 戦火…故郷は勢力争いに巻き込まれていた。青年一行も必死の抵抗虚しく散る　　　
　　　　　　　　結局彼らの知識はこの時伝わらず、持ち帰った鉄器その他のみが伝わる
　31番 – 祈り…鎮魂の祈り。そして未来への希望。

　一見無駄に思えるバッドエンドです。しかし、こうした出来事、名も知らぬ沢山の人々の存在がいくつも積み重なって人々は歴史を刻んできました。直接的に未来を見据えた曲ではなく、文字にも残っていない過去を振り返ることになりますが、新たな技術を開発した先人たち、新たな文化を獲得しようと決死の思いで旅立った人たち、技術とともに生まれた社会問題や紛争…。あらゆることが今という時代に生きる私達の礎になっていることは忘れたくない、忘れてはならないことです。