〈左手のための2つの小品 op.9〉は1894年、すでに音楽院を卒業してピアニストとして活動を始めた頃に書かれているが、明らかに在学中の右手故障がきっかけとなって作られたものである。低音部にみられるアルペッジョとオクターヴは、左手のための小品の名にふさわしい。しかし、重音の連続や即興的なカデンツなど、右手の技術も充分に要求される。