スクリャービンは、作曲の衝動におそわれると悪寒に震えたり、涙を流したりしたと言われているほど繊細な神経の持ち主だったという。〈幻想ソナタ〉は1886年に書かれた最初期の作品。14歳とは思えないほどの大人びた表情をみせている一方で、心の動揺を伝えずにはいられない純粋さにもあふれている。哀愁の漂う旋律、その雰囲気は、彼が大きな影響を受けたショパンに通ずるものを感じさせる。