〈2つの詩曲 op.32〉が書かれた1903年には、実に多くのピアノ曲が生まれ、それらはまるで20世紀の幕開けを告げるかのように独創性を強く帯びている。この〈第1曲 嬰ヘ長調〉は、右手の旋律と左手の伴奏からなる叙情的なノクターンを思わせるが、〈左手のための2つの小品 op.9〉のようなロマンティックな雰囲気とはかけ離れた、新しい響きをもっている。スクリャービンは、神秘和音と呼ばれる独特な和声の試みを、初めてこの作品の2小節目と7小節目で行っている。