
ラウル・コチャルスキ/Raoul Koczalski(1885-1948) という名前はいにしえの巨匠ピアニストマニアが密かに愛でていた存在ですが、ようやっとピンと来る方が増えてきた印象があります。4歳で舞台デビュー、5歳から作曲を始めて7歳までに40を越える作品を書くなどの正真正銘の神童でした。その才能に、かのショパンの高弟カロル・ミクリ/Carl Mikuli(1819-1897) が「私はこの少年にショパンから教わったことを全て伝える!」と1892年から4年間、徹底的に「仕込んだ」のでした(そのレッスンがホントに大変だった、とコチャルスキは告白していますぞ)。
なるほど、コチャルスキによるショパンの録音からはショパン自身やその周辺からの証言を裏づけるかのようなところが随所に聴き取ることができまして、コチャルスキの大変な才能と、その才能をミクリがゴリゴリに「ショパン的に」仕込んでくれた幸運に感謝せねばならないと思わされます。ただし、だからと言ってコチャルスキのショパンこそが唯一の正統であると盲信してもならぬでしょう。コチャルスキはあくまでもコチャルスキであって、ミクリでもましてショパンでもないワケですからね〜。
コチャルスキの手による「前奏曲集 op.65」は4巻、おそらく1910年に出版され、全ての調性による24曲からなります。この6番はシャープ2つのロ短調で、寂しげな部分と温かい中間部の対比が美しい佳作です。