
「風紋」は1986年に全日本吹奏楽連盟の委嘱により、第35回全日本吹奏楽コンクール課題曲として作曲された。この時、演奏時間の制限により諦めざるを得なかった構想をもとに、1999年に改訂を行い風紋(原典版)として発表。2009年、保科アカデミー室内管弦楽団の委嘱により、原典版をもとに管弦楽編曲が生まれた。
寄せては返す波のような印象を与える導入部から、砂浜に残された風の紋を連想し、曲名は「風紋」と名付けられた。しかし、作曲者の言によれば、とくにそのような風景を思い描いて作曲したわけではない、という。実際、保科は近しい人間に「自分は標題音楽を殆ど書かない」と漏らしており、風紋の名が決まるまでにも、身近な人間に「なにかいい曲名はないか」と相談して回ったほどであった。結局、偶然開いた辞書の頁に書かれていた「風紋」が作曲者の気に入り、最終的にこの曲名が選ばれた。
しかしながら、この初めから存在していたかのように曲の特徴をよく捉えた「風紋」の名が、吹き渡る風を思わせる旋律の印象とあいまって、多くの人に愛されるきっかけを作ったことは論を俟たないであろう。