《風のオデッセイ》(L'Odysee des Vents) は、吹奏楽の多彩な響きと豊かな音色を讃える作品として生まれました。絶えず変化しながら進んでいく音楽の物語は、荘厳で雄大な風景から、そっと寄り添うような繊細な響きまで、聴く人の心を揺さぶりながら旅へと誘います。ひとつひとつの瞬間が探求の場となり、広がる音の質感や移ろう空気に、身を委ねていただければと思います。演奏では、各楽器が持つ表現力と技巧が存分に活かされ、随所に登場するソロが個々の楽器の個性を際立たせます。それらが重なり合うことで音楽に奥行きが生まれ、アンサンブル全体で広がりのある響きを創り出します。さらに、打楽器がリズムの躍動感や色彩の鮮やかさを支え、音楽に生命力とダイナミズムを与えています。流れるように移り変わる調性、ドラマチックな展開、そして細やかな音の対比を通して、《風のオデッセイ》は演奏者にも聴衆にも、没入感のある音楽体験を届けることでしょう。それぞれが自由にこの音楽を感じ取り、響きの波やうねりに乗りながら、自分だけの物語を描いていただけたら幸いです。吹奏楽ならではのしなやかさと力強さが支えるこの音楽の旅が、聴いてくださる方の心に深く響くことを願っています。(小板 哲雄)