
■楽曲について
1711年、アムステルダムで出版された《調和の霊感》はヴィヴァルディの名声を確かなものとした作品である。第11番ニ短調第一楽章は焦燥感を持つ冒頭、寸断されたわずか三小節の叫び、堂々たるフーガで結ばれる。1708年から1717年、ヴァイマル時代のバッハもこの譜面を入手し、《オルガン協奏曲 BWV596》として編曲を手がけた。
打楽器を志す以前、ヴァイオリンを通してこの作品に出会ったときの衝撃は大きかった。この時受けた照井勢子先生のレッスンはその後の僕の音楽の根幹をなすものとなった。
いつの日か打楽器でこの音楽を表現できないだろうかと企んでいた。ヴィブラフォン独奏で取り組んだこともあったが満足のいくものはできなかった。重層的なアンサンブルの響きを希求していた。
2021年春、奈良県吉野山で満開の桜を見た帰り道、谷口かんなさんより8月14日京都公演での全員合奏のためのアンコールピースに最適なものはないだろうかと相談を受けた。今こそ時は熟したのではないかと思った。書き下ろしの提案をしたところ快諾をいただき、ヴィヴァルディ、バッハ双方のスコアを照らし合わせながら310年の時を超えて艶やかに光り続けるこの音楽を打楽器で表現することを試みた。
今回も浄書にご協力いただいた小國晃一郎さんに心から感謝を申し上げたい。
初演は2021年8月14日京都文化博物館。アンサンブルさいさいと照井勢子先生に捧げる。
(會田瑞樹)
初演 2021年8月14日 京都文化博物館 別館ホール
「アンサンブルさいさい 會田瑞樹氏を迎えて」
池田健太、立入瑞希、谷口かんな、前田紗希、松井駿、山本美緒、横田悠哉、會田瑞樹
楽器編成(最大8名)
ヴィブラフォン 1台
マリンバ (5オクターヴ) 2台
打楽器(金属、木質、皮質の中で自由に奏者が選択できる)
演奏最低必要人数 3名
ヴィブラフォン 1台
マリンバ (4オクターヴ) 2台
※マリンバは?T-a,?U-aを演奏。
フレキシブル編成の参考例
ヴィブラフォン 1台
マリンバ (5オクターヴ) 1台
マリンバ (4オクターヴ) 1台
※マリンバは?T-a, ?U-a, bを演奏。
適正打楽器を組みあわせるなど。
打楽器について
音高のみを指定し、金属(シンバル、トライアングル、タムタム、鉄の板など)、木質(ウッドブロック、木片、ウッドチャイム、テンプルブロックなど)、皮質(バスドラム、スネアドラム、トムトムなど)のなかで自由に組み合わせて良い。またバチや弓奏、指で弾く等、それらもアンサンブルバランスで即興的に調整する。
強弱について
原曲楽譜には強弱記号は一切書かれていないため、この編曲においても明記を意図的に避けた。合奏の稽古、演奏する空間によって奏者が自在に呼吸するように強弱をつけていくことが望ましい。
演奏にあたって、ヴィヴァルディ、バッハそれぞれの原曲を様々な演奏を聞くことを心がけ、楽曲の多様な解釈に触れることを編曲者として希望する。