
「新宝島」(しんたからじま)は、日本のロックバンド・サカナクションの楽曲。11作目のシングルとして、ビクターエンタテインメント内のレーベル・NF Recordsより2015年9月30日にリリースされた。
メンバーの草刈が出産のため、バンド活動を一時休止しており、前作「さよならはエモーション/蓮の花」より、約1年ぶりのシングルとなった。本楽曲は、映画『バクマン。』主題歌として制作され、音楽性はバンドの近作とは異なるアッパーなポップ・ミュージックの要素を持ったオルタナティヴ・ロック、ダンス・ミュージックに仕上がっている。
タイトル「新宝島」は、山口が楽曲のテーマを追究するために、漫画を研究した中で見つけた一作である、手塚治虫の作品『新宝島』より借用されている。
本楽曲は、2018年にベスト・アルバム『魚図鑑』に収録された。2019年には、日本テレビ系列『ゴールデンまなびウィーク』テーマソング、2020年には、ソフトバンク「5G」CMソング、2022年には、TikTokのCMソングとしても使用されている。
本楽曲のサウンド、リズム、メロディといった様々な要素は「バンドの新たな姿勢」「原点回帰」と評され[4][5]、Billboard JAPAN「Hot 100」で首位を獲得。また、オリコンでは最高位9位を記録。日本レコード協会からもダウンロードでダブル・プラチナ、フィジカルでプラチナのゴールドディスク認定を受けている。
本楽曲のミュージックビデオは、田中裕介が監督を務め、フジテレビ系『ドリフ大爆笑』といった昭和の歌番組やバラエティ番組をオマージュしたレトロ感のある演出がなされた。本ビデオは「MTV Video Music Awards Japan 2015」にて「最優秀邦楽グループビデオ賞」にノミネートされている。
また、ミュージックビデオとは別に存在するカラオケ映像では、映画『バクマン。』の監督・大根仁が指揮をとり、1980年代末から1990年代初頭のカラオケ映像の質感を再現した映像が制作された。大根が、映画『バクマン。』をセルフパロディし、漫画家の男性と1人の女性の恋模様が描かれている。映像には、山口も出演している。
楽曲リリース10周年を記念し、2025年9月28日には、前述のカラオケ映像がバンド公式YouTubeチャンネルにて公開された[6]。そして、リリースから10年が経過した2025年9月30日には、本楽曲のドルビーアトモスによる空間オーディオの配信が、Apple Musicにて開始された[7]。
本楽曲は、映画『バクマン。』の映画音楽である[8][9]。『バクマン。』の映画プロデューサー・川村元気は、バンドへの映画音楽の依頼、および本楽曲を主題歌として依頼するにあたって、雑誌インタビューにて以下のように述べている[8]。
「
映画って音楽が良くないとヒットしないと思うんですよ。〔中略〕プロデューサーとしてはひたすら音楽家探しをやっていて。〔中略〕サカナクションにはロックな要素とダンスミュージックの要素と両方あるし『バクマン。』という映画には両方必要だと思った。
」
また、バンドのフロントマン・山口一郎と映画の監督・大根仁の対談では、映画の制作陣がバンドを劇伴、および主題歌に起用した経緯が語られている。
「
プロの作曲家が作る「いわゆる劇伴曲」というのが自分の作品には合わないなと思ってもいて。トラックメーカーとかアーティストに作ってもらったほうがしっくりくるんですよね。だから劇伴が作れそうなアーティストを自分の中で何人かブックマークしていて、その中にサカナクションがいたんです。
」
—大根仁(ナタリー「山口一郎(サカナクション)×大根仁 音楽と映画で歩く「バクマン。」のリアルの対談」[9]より)
また、バンドを起用したきっかけの1つとして、フェスティバル「TAICOCLUB」にて、大根がバンドのライブを観て、衝撃を受けたことから「お客さんを巻き込んでいく感じがすごくて、『バクマン。』の音楽を頼んだら面白いことになりそう」と発想し、タイアップを依頼したという[8]。また、劇伴や主題歌の担当は、キャストより先にバンドの起用が決定していた[10][11]。
本シングルは、ビクターエンタテインメント内に立ち上げた自主レーベル・NF Recordsによる初のCDリリースであり、共にシングル発売としても初の作品となっている[12]。これに関連し、バンドはアーティスト写真を一新した[12]。
本楽曲は、バンドの11枚目のシングルとして、NF Recordsより2015年9月30日にCDシングルとしてリリースされた。本シングルは、通常盤・初回限定盤・豪華初回限定盤の3形態で発売された。
限定盤のボーナスディスクには、バンドが担当した映画音楽が『MOTION MUSIC OF BAKUMAN。』のもと、1曲の楽曲として収録されている[13][14]。また、本楽曲は、2018年3月28日にリリースされたベスト・アルバム『魚図鑑』にも収録されている[15]。
本楽曲のリリースから10年が経過した2025年9月30日には、本楽曲のドルビーアトモスによる空間オーディオの配信が開始された。空間オーディオは、Apple Musicにて配信され、バンドとして「怪獣」に次ぎ、2曲目の空間オーディオとなる[7]。
本楽曲は、映画の「漫画家を目指す2人の青年の活躍を描いたストーリー」を参考にし、テーマに「線を描く」を掲げて制作された[16][17]。楽曲中には、漫画家と音楽家に共通する「モノを作る苦しみ」が表現されている箇所がある[14][17]。
また、大根からはもう1つのテーマとして「押しつけがましくない卒業ソング」というお題も出されている[17]。映画は、主人公の2人が高校から卒業をする日に卒業式には出ず、教室で話し合っているシーンからエンドロールに入る[18]。そのため、大根から提供されたテーマは、映画のストーリーから「新宝島」へ関連性をもたすはたらきをしている[17]。
制作にあたって、山口は普段読まない漫画を読み、研究を重ねたという。これに際し、山口は「漫画の映画の劇伴や主題歌を作るときに自分から学ばなければいけないなと思った。日本の漫画の原点ってなんだろうと調べたら手塚治虫に着いた」と発言しており[19]、タイトル「新宝島」は、手塚治虫の『新宝島』より借用されている[17]。
本楽曲は、元々「新宝島」というタイトルではなく『バクマン。』の主人公たちがペンで書く「タッチ」とその2人がハイタッチをするシーンから「タッチ」となる予定であったが、原作が『週刊少年ジャンプ』に掲載されているのに対して『週刊少年サンデー』で掲載されていた漫画『タッチ』と題名が同一になってしまうために、映画スタッフに指摘され、タイトルを変えたという逸話がある[20]。
本楽曲は、コンピレーション・アルバム『懐かしい月は新しい月 〜Coupling & Remix works〜』より遅れてリリースされているが、作曲は2014年4月より開始されており[21][22]、本楽曲の方が先に作業を始めている[19]。本楽曲を制作するにあたって、山口は2015年7月に発売された雑誌のインタビューにて「史上最大級に苦戦した」と述べており[19]、楽曲の制作に1年2ヶ月を要している[21][22]。ベース・コーラス担当の草刈愛美の産前産後休業による制作ペースの遅延、キーボード・コーラス担当の岡崎英美のスランプ、映画に寄せるためになどを理由に、楽曲の完成が遅れたという[23]。また、その影響で映画の完成へ影響が発生しており、この一連のことから本楽曲への苦難がうかがえる[8][19][20][23]。
その一方、山口は大根と関わっていく中で、大根が様々と映画に対して挑戦をしている姿を見て「自分も作品に手を抜くことは出来ない」「監督が喜ぶものをつくりたいなという一心だった」など、大根への敬意も作品にこめられている[19]。
また、映画の台本を貰った際に「ちょっと明るい曲にしなきゃ」と山口が思い「監督に『次へ行け』と背中を押された気がした」と、山口は述べており、監督との関わりは、本楽曲での構成も変えている[8]。
一方、音楽雑誌『Talking Rock!』の取材では、大根による影響については特に触れず「観る層も高校生と大学生という、はっきりとしたマーケットがわかっていて。求められている楽曲というのもパンチのある明るいものなのだろうなというのもわかっていたから、じゃあここでふりきってそういうものを作ることで新しいストーリーが生まれるかなとも思った」と述べ、想定されるリスナーからの影響について説明している[24]。
また、本楽曲の歌詞には、バンドが2015年9月に開催したオーガナイズ・パーティー「NF」に関連した歌詞が複数組み込まれている[24]。〈このまま君を連れて行くよ〉は「このまま『NF』に連れて行くよ」という意味が込められているという[24]。
「NF」は「外に音楽を発信した時に、興味を持ってくれた人たちが辿り着ける場所を作ることで自分がまた表向きな気持ち、ポジティブな気持ちで音楽を作ることができるようになれるのでは」という山口の考えから、本楽曲の制作途中に計画、開催されたイベントであり、これを開催したことにより、山口は本楽曲の歌詞を書くことができたという[25]。また、2015年11月に開催された「NF」の第2回にあたる「NF #02」では、イベントテーマが本楽曲の歌詞に影響されたことにより「SEN」と題している