作品について
1960年代半ば、ジュリアード音楽院ピアノ科の準備課程に在籍していた年に私の担当教員は休暇を取ることになった。その後の1年間は同音楽院の研究員であったデンマーク人の若い先生に師事したのだが、彼との出会いは私の人生を大きく変えるものとなった。彼の存在は私の創造性を大変に刺激し、また彼こそが音楽を生業とすることについて真剣に考えるきっかけをくれた初めての先生であった。この間に私はカール・ニールセンの音楽に惚れ込み、彼は数多くのニールセンの作品を紹介してくれた。クラリネットを演奏する身としてはニールセンのクラリネット協奏曲についても知ってはいたが、このピアノ作品こそ私が最初に勉強したものである。それ以来、私はニールセンが持つ単純さと子供らしい性質に魅了され続けている。今から20年程前、私はこのピアノ作品をピアノとクラリネットのデュオとして演奏できるか興味が湧き、実際にコペンハーゲンで初演にする至った。作品の大半はシンプルで、短く、子供っぽいものが多く、演奏にあたってはとてもチャーミングで楽しいものになると思っている。それぞれの楽章は最初の「Hello, Hello」から最後の「Musical Clock」まで独自のキャラクターを持っている。叙情性とクラリネットの技巧性が見事に組み合わさったこの曲は今でも私のお気に入りの1曲となっている。私はこの作品をPeter Weissへの追悼の意を込めて彼へと捧げることとする。(スティーブ・コーエン)(翻訳:国田健)