パルティータハ短調BWV997の第1曲。今日リューティストやギタリストの主要なレパートリーとなっているが、もともとリュートの弦を貼ったチェンバロであるラウテンヴェルグのために作曲されたと想定される。鍵盤楽器での演奏が十分に想定される作品であるが、原曲のままで鍵盤で演奏するには、ソプラノとバスの音域が乖離し過ぎているためソプラノをオクターブ下げて調整を行った。また、適宜、和声も付加したが最小限にとどめた。本曲はバッハの数ある鍵盤のための組曲の中でも屈指の出来栄えであるにも関わらず、これまで鍵盤による十分な演奏機会に恵まれてこなかったのは、チェンバロやピアノの実演用の譜面が流通してこなかったためだと思われる。バッハの鍵盤作品にこのような名作がまだ存在していたことに驚かれるだろう。
本作品が収録されているアルバム
『J.S.バッハ&S.L.ヴァイス リュート作品の鍵盤用トランスクリプション集 杉浦菜々子(ピアノ)』
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