リヒャルト・シュトラウスが最初に作った歌曲集の中の第8番。「万霊節」とは、キリスト教で11月2日の死者の魂を祀る記念日のことです。ヘルマン・フォン・ギウムの詩につけられた曲で、シュトラウスが18~19歳の頃に作曲したと伝えられています。今回は原曲のピアノ伴奏譜から少し離れた新たな解釈なども織り込んで、じんわりと心の奥に染み込んでいくような曲想にまとめてみました。この曲の最大の魅力、そして演奏上の難関は、異名同音を絶妙に扱いながら繰り返される転調です。また、感情の高まりをフォルテで吐き出すように歌うのではなく、極弱の緊張感の中で切なく語る表現方法なども研究しましょう。[E]に登場する装飾的な音の扱い方は、自身の歌い方を模索してみて欲しいです。味わい深い音楽作りを目指してみてください。