「まっすぐ」のピアノソロは、エビ中を多くの人に演奏して欲しいという思いから楽譜を作成しました。この文章の前半では楽譜の特徴を、後半ではいくつかの細かいポイントを説明したいと思います。
まず、楽譜はピアノで表現するためのアイディア集となっていますので、全てを楽譜通りに弾かなくても構いません。部分的にピックアップしたり、自由に変更してエビ中の音楽を楽しんでください。サビを弾きやすくして、歌に集中できるように構成しています。極端な手の跳躍は避けて、間を作るようにもしました。歌詞を意識して演奏するために、漢字で表記しています。また、譜めくりを最小にするために繰り返しやダル・セーニョ(D.S.)は使わないようにしました。
次に3つポイントを絞って解説します。
1つ目は、サビ直前の3本化手法です。サビに入る前のストリングスを弾きたいと最初に考えましたが、ストリングスとメロディが同時に鳴るので、メロディを左右の手に分けるギミックを施しています。このストリングスのフレーズがサビで転調するために重要な役割なので、どうしても弾きたかったのです。この弾き方を自分は勝手に3本化手法と言っています。
2つ目は、2番の後、ブリッジの部分の真山のパートです。真山のロングトーンと他メンバーのパートを同時に弾く部分があります。真山の歌には、苦しみの要素があって、ロングトーンの直前の音にテンションコードを加えています。まっすぐはコードを凝りすぎるとその純粋さが失われてしまうのですが、真山のパートだけは別だと考えました。
3つ目は、ラストをひなたから引き継いだののかまるのパートです。ここはののかになったつもりで、何も足していません。両手でオクターブを取り、メロディだけを弾きます。ののかまるのロングトーンは、当たり前ですがぁぃぁぃやひなたとは、全然違います。しかしながら、この二人をピアノで表現することはかなり難しく迷いがありました。ピアノ音色は減衰音なので、持続させるにはペダルやトレモロなどを使ったりします。しかしそれだと、イメージと合わないのです。どうしようか考えていたのですが、今のののかまるのイメージならば、最後は盛り上げるのではなく、むしろ静かな環境でののかだけの音を響かせるというイメージになりました。ですので、ロングトーンの裏でアウトロをどうやって弾くか、タッチや音量バランスを考えて弾くことになります。
最後に蛇足となりますが、この曲に限らず、どこが好きなポイントかを考えると楽譜の見方が変わります。楽譜を見る前に、動画や生のパフォーマンスを確認すると、曲から得た感情、生のパフォーマンスを見た時の気持ち、推しへの感情があると思います。これを忘れないようにして、それらをピアノに落とし込むことが演奏の作業と考えています。この楽譜をもとに、エビ中を弾く人が増えてくれることを願っています。