尺八古典本曲。琴古流の曲は正確には呼返鹿遠音(ヨビカエシシカノトオネ)と呼ばれ、初代黒沢琴古(クロサワキンコ)が一計子という虚無僧から伝えられたとされている。前吹きに、盤渉調という曲を吹くこともある。別名に、友音(トモネ)、鹿の友音(シカノトモネ)とも。
秋の深山幽谷に響く鹿の鳴き声の掛け合いの描写を曲想としており、非常に美しい。鹿の鳴き声を客観的に聞くというよりは、自らが鹿になって遠鳴きしており、山野を疾走するかのような趣がある。一管だけで吹く場合もあるが、通例は二管での掛け合いで演奏される(ただし、すこし短く編曲されたりするのがもっぱら。三返するところから本来は三管での連管だったのかもしれない)。青木鈴慕(アオキレイボ)と山口五郎(ヤマグチゴロウ)両師が演奏している鹿の遠音は、非常に聞きごたえのある名演奏である。美しく個性的な旋律は、多くの人に親しまれ、琴古流の代表曲としてだけでなく、尺八曲全体の代表曲としても広く知られている。
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