
【楽曲について】
このソナタは、音楽史におけるバロック時代後期、ヨーロッパ随一の音楽都市であったヴェネツィアで活躍した作曲家、
トマゾ・アルビノーニ(1671-1751)によって、1700 年頃に作曲された〈5 声のシンフォニアと協奏曲集〉作品 2 の第 11
曲にあたる曲です。
本作は、4 つの楽章(緩 - 急 - 緩 - 急)からなる典型的な「教会ソナタ(Sonata da chiesa)」の形式で書かれています。
ト短調という調性がもたらす高貴な悲哀、そして 2 つのヴィオラパートを含む原曲の 5 声編成が織りなす豊潤なハーモニー
が、この作品に比類ない深みを与えています。この編曲は、ジャン・ティルド (Jean Thilde) 氏や渋谷圭祐氏らによる従来
の四重奏版とは異なり、原曲の 5 声構造を忠実に再現するため五重奏としました。
【演奏にあたって】
この時代の様式美と気品を表現するために、以下を参考にしてください。
1. アーティキュレーション
バロック音楽では、一音一音の輪郭を大切にします。速い楽章では軽やかに(特に指示のない八分音符は短めに)、
遅い楽章ではより柔らかいタンギングで噛みしめるように演奏しましょう。また、スラーは、最初の音に重みを置き、
最後は優しく抜くことで、自然な抑揚を出してください。
2. リズムと装飾の様式
・付点リズム : 第 1、第 3 楽章の付点リズムは、付点音符を楽譜以上に長く「溜め」、続く短い音符は軽く弾き飛ばさずに、
重みを持って次の音へ踏み出すように演奏してください。楽譜に記されたテヌートは、この重々しい性格を強調するた
めのものです。
・装飾音 : トリルは必ず上の音(2 度上)から始めるなど、バロックの基本的なルールを守ることで、音楽がより本格的
な表情を見せます。
3. 自由な装飾(即興演奏)
楽譜に書かれた装飾音符以外に、特に緩徐楽章では、、この時代の演奏習慣にならって、ぜひ自由な装飾を加えてみ
てください。主導権は主旋律パートにあります。他のパートはそれを聴き、アンサンブルの調和を保ちながら支えてく
ださい。元の美しい旋律の骨格を尊重しつつ、皆様自身の音楽性で彩りを加えてみてください。