『四季』で有名なヴィヴァルディ、そのヴィヴァルディの最初の協奏曲集が『調和の霊感』である。この『調和の霊感』は12の協奏曲からなり、それまでの小アンサンブルと大アンサンブルの対比による合奏協奏曲の様式から、ヴィヴァルディらが確立した独奏協奏曲の様式への橋渡しとなった作品集である。それぞれ協奏曲では1挺から4挺のヴァイオリン及びチェロが独奏として扱われ、合奏協奏曲から独奏協奏曲までの間のグラデーションで多彩な響きが楽しめる。
『調和の霊感』の評判は当時の音楽界にヴィヴァルディの名を知らしめることになった。『調和の霊感』も新しい協奏曲の1つの規範とみなされ、後にJ.S.バッハもそのうち数曲を編曲することになる。
これは全12曲のうちバッハ編曲でも知られる第9番を、管楽器を交えたアンサンブル用に編曲したものである。原曲は独奏ヴァイオリンのための協奏曲であるが、複数の管楽器を加えたことで合奏協奏曲的な部分を意識することになった。第1楽章はトランペットのファンファーレのように始まり、独奏部と合奏部が互いに現れる。第2楽章は薄い伴奏の上で美しい歌が奏でられる。2挺のヴァイオリンの二重奏から始まる第3楽章は、より自由な形で独奏が演奏され、遊び心を持って幕を閉じる。