
作曲:近藤浩平
作曲期間;2025年9月5日~10月2日
作曲委嘱:ひらい悦子
噺家の「語り」シナリオ制作:ひらい悦子
初演 2025年11月1日 藏我楽胡桃庵 (大阪府豊中市)
朗読:桂枝女太、ひらい悦子
演奏ヴァイオリン:木村悦子 クラリネット:小谷口直子
全11曲
1.序曲 ラクダの行進と吉野五運と出囃子(3分50秒)
2.淀川を渡るオランダ人(2分50秒)
3.若冲と心寂(真寂)(1分20秒)
4.西福寺を出発するラクダの行進 (2分15秒)
5.服部天神の木村蒹葭堂(きむらけんかどう)(1分10秒)
6.岡町の賑わい(1分10秒)
7.若冲と蒹葭堂の会話(2分10分)
8.池田の呉春(1分45秒)
9.早駕籠の音楽 (1分20秒)
10.猪撃ちの六太夫(35秒)
11.箕面滝にて(1分45秒)
音楽のみでの演奏時間 合計約18分
江戸時代、8代将軍、徳川吉宗の頃、京都、大坂は画家や町人学者、文化人が多くいました。円山応挙、伊藤若冲、池大雅、与謝蕪村は、当時も今も京都=日本を代表する絵師の四天王と言えます。その中で伊藤若冲と蕪村の弟子の松村月渓=呉春は、京都洛中の8割を焼き尽くしたという天明の大火(1788年)で被災し、若冲は義理の妹の心寂とともに服部天神の近く西福寺に、呉春は池田に滞在していました。彼らを支援したのが、大坂の知の巨人であり、広い交流で一大サロンを作っていた木村蒹葭堂と、薬種問屋豪商の吉野五運でした。
この時代背景と落語の「池田の猪買い」をヒントに、ひらい悦子さんが、木村蒹葭堂と吉野五運がそれぞれ能勢街道を北に向かいつつ、被災した呉春と若冲を励まし、美しい箕面の瀧の前で絵師たちが画業への再起へと再出発するロードストーリーを生み出しまし
た。
木村蒹葭堂は接遇を任せられていたオランダ商館長の息子(トン・ファーステン)を伴って能勢街道を北上して呉春を訪ね、猟師、六太夫とともに池田の山奥へ猪撃ちに向かい、一方、吉野五運は長崎から輸入されたラクダに若冲と心寂を乗せて箕面瀧へと向かい
ます。一行は、途中、服部天神で出会って再会を喜び、岡町へと途中の行程をともにします。最後には箕面瀧に一同が集まる大団円を迎えます。
若冲と呉春、木村蒹葭堂と吉野五運、オランダ人、心寂、猟師の六太夫が生き生きと描かれ、一行が進む大坂から池田、箕面への能勢街道の風情、風土が感じられる台本を、初演では落語家の桂枝女太さん、一部分はひらい悦子さん自身が朗読し、その間に、序曲や
間奏曲のように各場面の音楽を挿入するという企画でした。
このために作曲した音楽を組曲としてまとめたのが、この作品です。
作曲家による作品解説
ひらい悦子さんが制作された落語台本からの作曲委嘱(作曲依頼)は、名曲「ピーターと狼」と同じくらい印象的で面白く、若冲と呉春、木村蒹葭堂、吉野五運の才能と品格と深みと大火の後の心情を描き分け、大坂から池田、箕面への能勢街道の風情を伝えること。
それをクラリネットとヴァイオリンのデュオで実現することという注文でありました。場所と登場人物の場面転換や情緒が鮮明な台本をそのまま描くように作曲しますと、驚くほど順調に11曲の音楽ができあがりました。作曲にあたっては、オペラのように各登場人
物や事物のライトモチーフを作って構成しています。
第1曲:序曲 ラクダの行進と吉野五運と出囃子
吉野五運が連れてきたラクダの行進曲。最後に「岸の柳」の旋律がでてきて出囃 子のようになります。当時、日本に連れて来られたラクダがいたと伝わります。若冲はラクダの絵を描いています。
第2曲:淀川を渡るオランダ人
長崎のオランダ商館長の息子、さまよわないオランダ人のトンさんが渡し船で淀川を渡る音楽。淀川の葭や波の自然描写もある。
第3曲:若冲と真寂(心寂)
吉野五運が西福寺の若冲と真寂を訪ねる。若冲と真寂の会話の音楽。
第4曲:西福寺を出発するラクダの行進
西福寺を吉野五運、若冲、真寂の一行がラクダに乗って出発する元気な行進。
第5曲:服部天神の木村蒹葭堂(きむらけんかどう)
木村蒹葭堂が服部天神をお参りする場面。蒹葭堂のテーマ曲。
第6曲:岡町の賑わい
吉野五運が口上を述べ、賑わう岡町の様子。若冲と五運とラクダの一行、蒹葭堂とオランダ人のトンさんの一行が合流して一緒にいます。
第7曲:若冲と蒹葭堂の会話
若冲と蒹葭堂が五運、オランダ人トンさん、ラクダの一行から少し離れて歩いて語り合う。二人は懐かしく語りあい蒹葭堂は若冲を励ます。
第8曲:池田の呉春
池田に呉春を訪ねる場面の音楽。呉春のテーマ曲。京都を離れた寂しさもありつつ、池田のおいしいものも食べて、街の人とも良い関係で催馬楽など楽しみ、住めば都な感じもある呉春の心情。
第9曲:早駕籠の音楽
晩秋、初冬の寒い道を池田の山奥へ早駕籠が走る音楽。プロコフィエフの「キージェ中尉」の「トロイカ」が江戸時代の日本になったような音楽。季節感描写にちょっとヴィヴァルディ的なところがある。
第10曲:猪撃ちの六太夫
猪撃ちの六太夫のテーマ。能勢あたりの民謡のような節が六太夫の人柄を感じさせる。
第11曲:箕面滝にて
晩秋の箕面滝。瀧の前での若冲、真寂の語らいから始まり、呉春もやってくる。箕面瀧の美しさが絵師たちの都を離れた寂しさを癒やし、絵を描きたいという気持ちを取り戻す。
参考用シミュレーションMIDI音源URL
1. 序曲 ラクダの行進と吉野五運と出囃子
https://youtu.be/vjfu_9_H3e4
2. 淀川を渡るオランダ人
https://youtu.be/dVVv6sqQ7nc
3. 若冲と心寂(真寂)
https://youtu.be/44oTT_-YRcQ
4. 西福寺を出発するラクダの行進
https://youtu.be/4S-Wz2npdo8
5. 服部天神の木村蒹葭堂(きむらけんかどう)
https://youtu.be/nW02KJ3Ska0
6. 岡町の賑わい
https://youtu.be/QfFitmo8kSI
7. 若冲と蒹葭堂の会話
https://youtu.be/qTNAnmKLQYo
8. 池田の呉春
https://youtu.be/9T2qZ_RBfqM
9. 早駕籠の音楽
https://youtu.be/Trul8Ln6ceg
10. 猪撃ちの六太夫
https://youtu.be/BNYWzR_w_Q4
11. 箕面滝にて
https://youtu.be/rz_uko8gBGU