この曲はもともとオーケストラ用に書かれましたが、その後ラヴェル自身が二台ピアノ版、そして一台ピアノ版へと2段階にリダクションしています。私は長く二台ピアノ版を弾いていたため、耳がそれに慣れてしまい、一台版ではいつも物足りなさを感じ、また、音が少ない部分でスピードを付けて攻撃的に弾く演奏が多いことにも疑問を感じていました(勿論、「死の舞踏」とも言えるコーダは攻撃的で良いと思いますが)。
そこで私は、これらの問題をクリアしようと、二台ピアノ版と管弦楽版に近付けて音を足して弾くようになり、このほど、その編曲を楽譜出版することにしました。少しだけ内声や装飾部分で音形を変えた部分はありますが、独自の音というのは一切入れていません。また、参考のために、どの音をどちらの手で弾くかの指示を入れ、ピアノのアクションによっては弾きにくい音や、小さい手では弾けないと思われる音はカッコ付で書き入れています。すべての音を弾こうとしないで、ご自分の手にあった弾き方を見つけて、色彩豊かでオーケストラ的な厚みある「ラ・ヴァルス」を奏でていただければ嬉しいです。(福間洸太朗)